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Vol.17「インテリアとはライフスタイルを考えてみること」後編

インテリアプロデューサー 南部昌亮

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前回、インテリアを考えることは自分自身の原点を考えることにつながっている、というお話をいただきました。今回はいくつかの具体例をあげながらこういう場合にはどういう風に考えたらいいのか、ということについてお話をお聞きさせていただきたいと思います

南部 : 早速ですが、もし新しいライフスタイルを、と考えた時にこれをやってみたい、ですとか優先してみたい、というものをお聞かせいただけますか?

- 私の場合ですが、断捨離をしてほぼ何もない部屋に立ったとしたら例えば自分が好きなひと、憧れている人がどういう部屋に住んでいるのかを調べて参考にしていくと思います

南部 : なるほど。まだこれが、というものがつかみ切れていないということなんですね。その場合、色々な事例を見て研究するということはとても良いことだと思います。インテリアにはすごくたくさんのスタイルがあって、例えば猫足の家具のようなヨーロッパの少し昔のスタイル。そういうものをお好きだとおっしゃる方も結構多くいらっしゃいます。一方でB&BやCassinaに代表されるようなものすごく削ぎ落されていてシンプルなイタリアンモダンがお好きな方もいらっしゃいます。そういう風に考えていくとどのあたりがお好きですか?

- どちらかと言えばシンプルなほうが好きです

南部 : ちょっと意地悪な質問に聞こえてしまうかもしれませんがなぜシンプルなものがお好きなんですか?こういった自己分析はやってみると「そうだったんだ」という読み解きや発見があってすごく面白いものですよ。ちょっと話がそれてしまいますが私がインテリアデザインやコーディネートをする場合に心がけているのはトゥーマッチにならないようにすることなんです。それは、できるだけ削ぎ落して、その空間を体感いただく方に「自分だったらこうする」と想像していただける余地を残すことだと思っています。

- 想像する余地、ですか

南部 : はい。前回のお話にも通ずるところですが、装飾を盛りに盛って120%にしてしまうのではなく60%位で留めておくと見ている方が参画できる余地を残しておけると考えています。その余地がインテリアを楽しんでいたたく最初のきっかけになっていくのではないかと思います。

- 本当に前回のお話の断捨離、ですね

南部 : 余地を残した上でご自身が一番優先したい時間を考えてみてください。ご自宅に帰った後、一番優先されるのはどんな時間ですか?

- 私はくつろぐ時間、です。家事をする時間とかはついつい後回しになってしまっています

南部 : ではくつろぐ時間を最優先に組み立ててみましょう。くつろぐことを優先すると今おっしゃったように家事をする時間を減らすことになり、結果として居室空間の中でダイニングやキッチンはサブ的な位置付けになるかと思います。

- おっしゃる通りです

南部 : ダイニングセットも小さめのものになりどちらかというとリビングが主になり、例えばそこに寝ころぶとこができる大きめのソファやテレビを置いたりしてご自身にとって居心地の良い空間をつくっていく。自分の中の優先順位を決めてインテリアというものを見てみると作り方が見えてくると思います。

- そうですね。私の理想はシンプルだけど何も無いのではなく、例えばクローゼットを開けたら中には自分の好きなものがたくさん入っていたり、キッチンの冷蔵庫にも大好きなおいしいものがぎっしり入っている生活です(笑)

南部 : できるだけ整理されていて、でも中には必要なものや好きなものがきちっとおさまっている。開けるとわくわくするような理想のライフスタイルですね。

- そうです。でも現実はやはり家族もいて妥協とまではいきませんがまあいいか、となってしまいます

南部 : お互いにインテリアの好みなどもあると思いますが一緒に家にいる人の意見も取り入れながら、ということは必要だと思っています。私も昔は良かれと思ってやっていることが理解されなくて、という経験があります(笑)。そういった経験を経てようやく今のところまでこれたと思っています。先ほど理想のライフスタイルをお聞かせいただきましたが、インテリアのテイストということではどういったものがお好きですか?

- 私はぬくもりがあるものが好きです。シンプルだけどステンレスみたいなクールな感じではなく木でも少し厚みがあって角が丸くなっているようなものです

南部 : 素敵ですね。分かりやすく例えるとarflexやTIME&STYLEの方向性が近いのかもしりませんね。TIME&STYLEも元々はシャープでエッジがきついくらいのテイストでしたが、ある時からガラッと変わって無垢を削りだした。エッジがきいたものもモダンで素敵ですが、ぬくもりとか触った時の手触りに温かみがあるほうが愛おしくなる気がします。
私個人的には今、そちらの方向に傾注しています。もちろん年齢とともに変わっていきますし、自分だけではない家族も含めたライフスタイルの中で自然に取捨選択されていくものなのかもしれません。
まずはベースを作って、最後の仕上げに自分は何をここに置くだろう、と考えてみる。
埋もれてしまっているものも断捨離をすることで突然見えてきたりします。そういう風に見えてきたものを最後に仕上げに持ってくると本当にばちっと決まると思っています。

- お話を聞いていてあれもこれも好きだけれど最後に残したいものって何かな、とちょっと考えています。わりと詰め込んでしまっているので

南部 : 大好きなものが目いっぱい詰まった部屋があるとして、もうひとつできるだけ何もない部屋が隣にあると考えてみてください。そうするとそこ持っていきたいもの、つまり最後に残したいものが見えてくるのではないでしょうか。これはやめておこう、というものがわかってくると余裕が生まれてくると思っています。 
色々なお話をさせていただきましたが、「良いインテリア」って何だろうと考えていくと一番大事なことはご自身の胸に手をあてて原点を考えてみることではないかと思います。その次にこういう風にしたい、という理想を持つことなんではないかと考えています。
それでその理想を書き出してみる。そうしていくことで自分のスタイルが分かってきて、それを実現するためにこうしたほうがいいという取捨選択がきちんと出てくると私は考えています。自己分析の先に初めてどういうアイテムを選ぶべきかという課題が見えてくる、のではないでしょうか。

- 自己分析と言われるとすごく難しいもののように感じますが、いただいたお話のように何が好きなのか、どうしたいのかという風に考えていくと実はすごくシンプルなことなのかな、と思えました。ありがとうございました

インテリアプロデューサー 南部 昌亮

フォワードスタイル株式会社 代表取締役社長
インテリアプロデューサー 南部 昌亮

住空間の心地よさとはデザインの美しさと品質、機能性の調和だと考え
住まう人の視点やライフシーンから発想したインテリアデザインを提案している。