INTERIOR JOURNEY

Home > コラム> INTERIOR JOURNEY > Vol.0 旭川家具の魅力を探る

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織田憲嗣さんの自邸を訪ねて

旭川の豊かな自然と、心地よいデザインとともに

旭川空港のほど近く、カラマツの森のなかに佇む織田憲嗣邸。
椅子研究家であり家具や日用品などの収集家としても世界的に有名な氏に
旭川家具の魅力と、美しく暮らすアイデアについて聞きました。

織田憲嗣 Noritsugu Oda

織田憲嗣 Noritsugu Oda

1946年、高知県生まれ。百貨店に勤めていたころに名作椅子に興味をもち、収集を始める。デザイナー、イラストレーター、大学教授、そして椅子研究家として活躍。著書に「ハンス・ウェグナーの椅子100」(平凡社)などがある。

何世代にもわたって愛用される家具

「子どものころから自然のなかで過ごすのが大好きで、中学1年生からキャンプに行ったり、社会人になってからも登山をしたりしていました。それで北海道への赴任が決まったときは、せっかくなら静かな森に住みたいと思ったんです。そして、現在の森での暮らしを始めて14年目になります」
 織田憲嗣さんが暮らすのは、旭川空港近くの森のなか。窓からはカラマツの木立が眺められ、時折、シカやキツネ、野ウサギ、エゾリスたちが庭を訪れます。
 そんな自然豊かな旭川で生まれたについて、織田さんはこう語ります。
「旭川ほど家具づくりのインフラが整った地域は、世界中を探してもないと思います。積雪寒冷地域のためミズナラやタモといった良材に恵まれ、旭川市工芸センターや旭川工業高等専門学校など、研究機関や人材育成施設も充実し、家具づくりに携わる約100社が集中しています。また、資料的価値の高い20世紀の名作家具が1400点以上も市内各所で保管されているのです。3年に一度開催される国際家具デザインコンペティションでは、世界中から新たな感性を募って商品化にも努めています。さらには、20年も30年も使って生じた不具合や、ソファの張り替えにも対応してくれます。何世代にもわたって愛用される家具づくりをしているのが旭川なのです」

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ベッドのヘッドボードや棚に飾られたボウル、ブランケットなどで赤を効かせると、空間に統一感とリズムが生まれます。
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アフリカの木製ベッドやインドのアンティークサリーのパッチワークなど、エキゾチックな調度品が北欧家具とマッチ。
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田中一光氏の赤いリトグラフに合わせて、カイ・ボイスンの赤い兵隊と赤い照明をディスプレイ。色を合わせると全体がまとまります。ものを楽しく美しく整理し、収納するアイデア。
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リビングの片隅につくられたコージーコーナーのひとつ。シェーズロング(寝椅子)の木材、額縁、オブジェを白木で揃えて、調和をもたせています。

普遍的な美しさをもつものだけを

 そんな織田さんの自邸には、世界のデザインミュージアムに匹敵するほどの価値のある家具が集結しています。1400脚近くあるコレクションのうちの50脚以上の椅子、数十点もの照明器具など、これほどものが多いのに美しく整然として見えるのには、秘密があるのです。
「大切なのはテイストを揃えることです。僕の家には遍的な美しさをもつものだけを置いています。ここに、流行りのファストな家具があるとインテリア全体のハーモニーが崩れますから。あとは、ものの中心線を揃えて配置することと、色で統一感をもたせることも重要ですね」
 また“コージーコーナー(居心地のいい場所)”をつくることを織田さんは提案します。
「畳1畳分でもOK。ラグを敷いて、イージーチェアとオットマンを置いてください。あとはコーヒーテーブルとランプ、ひざ掛けにクッションがあればいいですね。パソコンやスマホは決して持ち込まないように。自分だけの時間が仕事に邪魔をされてしまうので」
 旭川の自然に囲まれた素晴らしい環境と、自分だけの聖域がある居心地のよい空間。ここには、本当の豊かさに満ちた暮らしがありました。

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所有しているカトラリーは1500ピース以上。セットごとにトレーに並べて引き出しへ収納しておけば、眺めたときも整って見えます。
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玄関のさりげないコーナーにも美意識が溢れています。ディスプレイするときは下に布を敷いて舞台をつくると、飾るものが映えます。
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リビングを横から見ても、家具やオブジェの中心線が揃っています。ものがたくさんあっても、整然と見せるコツです。
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匠工芸のフロアスタンド。まるで樹木のように有機的で繊細なフォルムは、フィン・ユールなどの北欧家具と相性良好。
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クリップや薬などの小さなものは、匠工芸の収納ボックスへ。見せたくないものを美しく収納。
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スウェーデンの陶芸家リサ・ラーソンの作品をはじめとする動物の焼き物は、すべて真っ直ぐ正面を向くように配置。

次回は日本伝統の木工技術を活かして木製家具を作り続ける「匠工芸」をご紹介いたします。

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