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年金が目減りするかも!?年金給付水準を調整する
「マクロ経済スライド」の仕組みを理解しよう

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将来の年金が目減りする可能性があるのはご存知でしょうか。年金は老後の生活に関わる重要な制度であるため、なぜ目減りしてしまうのか、年金制度の仕組みを確認しておきましょう。

マクロ経済スライドは現役世代の負担を減らす仕組み

マクロ経済スライドは、年金の被保険者の減少や、経済状況を踏まえた上で年金の給付水準を調整する制度です。

本来、年金額は賃金や物価の変動によって毎年改定されるため、物価が上昇すれば年金も増加する仕組みです。

具体的な数字を挙げて、説明しましょう。例えば、現在受け取っている年金が10万円だったとします。物価が10%上昇したとなれば、年金も10%上昇し11万円もらえることになります。物価が10%上昇しているのに、もらえる年金額が10万円のままだと、それまで10万円で買えていたものが少なくなってしまうからです。補足すると、1万円の商品が物価10%上昇で1万1,000円になります。物価上昇前は10万円で同商品が10個買えていたのに、物価上昇後は10万円で9個しか買えなくなるのです。

しかし、物価が上がったからと年金額を同じように上げていると、その分を現役世代の保険料を増やして補うことになり、彼らの負担が重くなります。その負担を軽減するために年金額の増加を抑える仕組みがマクロ経済スライドなのです。

なぜ負担を減らす必要があるのか

負担を減らさなければならない大きなポイントは2つあります。まず、現役世代の減少です。お金を払って年金制度を支える側が少なくなっているという点です。

2つ目は平均寿命が延びていることです。年金を受け取る側が増えて、さらに受け取る期間も延びているという点です。

このままでは年金制度を現役世代で支え続けるのが困難であることが問題視されていたため、マクロ経済スライドによって現役世代の負担を減らそうということになったのです。

マクロ経済スライドの注意点

マクロ経済スライドは、保険料負担率を軽減する制度であるため現役世代に有利な制度となっていますが、現時点で現役世代の方も今後受給者となった場合は、老後の生活に影響を及ぼす可能性があります。マクロ経済スライドに関する注意点は次の通りです。

受け取れる年金が目減りする

公的年金の受給者は、マクロ経済スライドの実施により実質的に年金額が減少します。なぜなら、改定率からスライド調整率を差し引いて給付額を決めるため、差し引かれたスライド調整率の分だけ年金が目減りする仕組みになっているからです。物価や賃金が上昇し、現役世代が減少すればするほど、長期的に年金が減少することは避けられません。

マクロ経済スライドは、現役世代の負担を軽減するために現在の受給者が実質的に負担し、現役世代も将来の年金額が目減りする仕組みです。短期的に考えれば保険料の負担が減るメリットもありますが、将来的には受け取れる年金が減少するというデメリットを想定しておかなければなりません。

どうなると目減りする(マクロ経済スライドが実施される)のか

マクロ経済スライドが実施されるかどうかは3つのパターンが考えられます。

  • 1.賃金や物価の上昇が大きいケース

    マクロ経済スライドが実施され、年金額のアップは抑えられます。

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引用:日本年金機構「マクロ経済スライド」より

  • 2.賃金や物価の上昇がそれほど大きくないケース

    マクロ経済スライドが実施されると年金額が下がってしまうため、年金額の改定は実施されません。

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引用:日本年金機構「マクロ経済スライド」より

  • 3.逆に賃金や物価が下落するケース

    マクロ経済スライドが実施されません。賃金や物価の下落分、年金額も下がります。

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引用:日本年金機構「マクロ経済スライド」より

具体的に年金の給付額を調整する基準にはスライド調整率があります。スライド調整率の計算式は「公的年金の被保険者の減少率(3年平均)+平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」です。計算したスライド調整率を賃金や物価から求めた年金の改定率から差し引いた割合をもとに年金額を決定します。

ただし、上図で説明したようにマクロ経済スライドの実施には条件があり、2のケースのように改定率からスライド調整率を差し引いたときに値がマイナスになる場合は実施されません。3のケースはそもそも賃金や物価が下がっているので年金も下がります。これは目減りではありません。

では、1のケースを具体的に考えてみましょう。例えば、賃金や物価が1%上昇しても、マクロ経済スライドによって改定率が0.5%になった場合、0.5%しか年金は上昇しません。

わかりやすいように、冒頭に挙げた例に当てはめてみます。年金10万円で1%の物価上昇となると、年金は10万1,000円になるはずです。ところが、マクロ経済スライドによって上昇率が抑えられ、10万500円しかもらえなくなる……つまり受け取れる年金額が目減りしているのです。

年金とプラスして資産形成を

マクロ経済スライドの実施によって将来の年金が目減りすることを避けられない現状では、公的年金以外の方法でも老後に向けた資産形成をする必要があります。資産運用を行うならiDeCoは老後の資産形成に特化した制度であるため、退職後の生活に不安があるならおすすめです。

また、運用によって資産を増やすだけでなく、住宅ローン控除や、ふるさと納税などの節税制度も活用しつつ、税金や生活費などの出費を減少させる努力もしていきましょう。資産運用や節税の知識に自信がない場合は、家計の金融のプロであるファイナンシャル・プランナーに相談するのもおすすめです。

著者:吉田 謙太郎

宅建士・不動産投資家・ライター|筑波大学卒業後、大手不動産会社にて投資用不動産の売買および賃貸営業・投資家へのコンサルティング・自社メディアでの記事執筆などを行う。自身でも社会人1年目(22歳)から不動産投資をしており、横浜市・大阪市・神戸市に区分マンションを4戸運用中。保有資格は宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、3級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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