子育てにはさまざまな費用がかかります。厚生労働省の調査によると、就学するまでの0歳~6歳までで子育て費用の平均は約740万円にのぼります。子育て中の方で、漠然とお金の面で不安を感じている方もいるでしょう。
「出産するのに、費用はいくらかかるのかしら?」
「育児休業で所得が減るのでは……」
「子供が怪我や病気をしたら、どれくらいのお金が必要?」
こうした不安を解消するために、国では以下のようなケースでの子育て支援制度を設けています。
- 出産
- 育児
- 育児休業
- 子供が怪我や病気をしたとき
本コラムでは、これらの支援制度について紹介します。法整備によって内容が変更になっていたり、住む地域で制度が異なったりするので、すでにご存知の方もお読みになっていただけると幸いです。
出産・育児に関する給付金
出産・育児に関する給付金は健康保険の対象にはなりません。ただし、出産や育児をする人に向けた支援策はあります。
- 出産育児一時金:自己負担となる出産の費用を補填する
- 児童手当:児童を養育する世帯に現金を給付する(所得制限あり)
出産費用を補填する「出産育児一時金」
出産は病気ではないため、健康保険の対象になりません。そこで、出産費用を補填するために「出産育児一時金」が設けられました。
- 支給条件:健康保険に加入している方
- 支給額:42万円(産科医療補償制度対象出産に該当しない場合は40万4,000円)
- 支給方法:支給額が医療機関等へ直接支給される直接支払制度
なお、直接支払制度が利用できない医療機関では本人が出産育児一時金を受け取る受取代理制度の利用が必要であり、この場合は厚生労働省への届出が必要です。
中学生までの養育費が給付される「児童手当」
児童手当は、0歳から15歳までの児童を養育する世帯に現金を給付する制度です。給付額は主たる生計維持者の所得や扶養親族の数によって異なります。
- 支給条件:所得1,200万円以下の世帯
- 支給額:扶養親族が3人で所得960万円未満の児童手当の支給額
-
・0歳~3歳未満 月額1万5,000円
・3歳~小学校修了前 1万円(第3子以降は1万5,000円)
・中学生 1万円 - 支給方法:現住所の市区町村に認定請求書を提出
所得が960万円を超える場合は一律5,000円の給付額となり、2022年10月の支給から所得1,200万円以上の世帯は児童手当の対象外になりました。詳しくは、内閣府の「児童手当制度のご案内」をご参照ください。
育児での休業に関する給付金
育児における休業の場合、原則として出産の42日前から子供が満1歳になるまでに出産手当金と育児休業給付金の2種類の給付金が受け取れます。
出産手当金
出産のために会社を休業した場合は、健康保険の出産手当金の対象です。
- 支給条件:出産のために休業した健康保険に加入している会社員
- 支給額:12ヵ月分の平均賃金の約3分の2
- 対象期間:産前42日、産後56日
- 支給方法:勤務先に出産手当金の申請を行う
健康保険に加入している会社員が対象であるため、自営業者・専業主婦は対象外です。
育児休業給付金
育児休業給付金は、子供を養育する義務のある会社員が育児休業中に受け取れる給付金です。
- 支給条件:子供を養育する義務のある会社員
- 支給額:支給が開始される以前の6ヵ月分の平均賃金の67%(28日が上限)
- 支給期間
-
・母親:産後56日を過ぎてから1歳となる前日
・父親:出生当日から1歳となる前日 - 支給方法:勤務先やハローワークを通じて申請
2022年10月からは産後パパ育休(出生時育児休業)が取得できるようになりましたが、こちらも育児休業給付金の対象となっています。
子供の怪我や病気にかかる費用は医療費助成制度で無料
子供の怪我や病気に関しては医療費助成制度により一定の年齢まで無料になります。ただし、助成内容は自治体によって大きく異なる点に注意が必要です。
- 支給条件:自治体で規定された条件を満たす子供を持つ世帯
- 支給額:医療費の全額(自己負担がある自治体もあり)
- 支給方法:各自治体への申請
制度を受けられる年齢・所得に関しては自治体のホームページで必ず確認してください。同じ都道府県であっても自治体によって条件が違う場合があり、一部自己負担を設けている自治体もあります。
例えば、東京都江戸川区では中学3年生までを対象としており、自己負担・所得制限はありません。同じ23区の千代田区では高校生の医療費助成も行っています。東京都立川市では1回200円の自己負担があり、扶養親族の数による所得制限があります。
助成内容は年度ごとに更新される場合もあり、東京23区では2023年から対象を中学生から高校生までに拡大し、自己負担を設けず所得制限を撤廃する方針を示しています。医療費助成制度を利用するなら、最新の情報を市区町村の公式ホームページから確認した上で申請してください。
子育てに関する支援制度を活用しよう
最後に、ここまで紹介した制度をまとめました。
支給条件 | 支給額 | 支給期間 | 支給方法 | |
---|---|---|---|---|
出産育児一時金 | 健康保険に加入している方 | 42万円(産科医療補償制度対象出産に該当しない場合は40万4,000円) | 支給額が医療機関等へ直接支給される直接支払制度 | |
児童手当 | 所得1,200万円以下の世帯 |
扶養親族が3人で所得960万円未満の児童手当の支給額 ・0歳~3歳未満月額1万5,000円 ・3歳~小学校修了前1万円(第3子以降は1万5,000円) ・中学生1万円 |
現住所の市区町村に認定請求書を提出する | |
出産手当金 | 出産のために休業した健康保険に加入している会社員 | 12ヵ月分の平均賃金の約3分の2 |
・産前42日 ・産後56日 |
勤務先に出産手当金の申請を行う |
育児休業給付金 | 子供を養育する義務のある会社員 | 支給が開始される以前の6ヵ月分の平均賃金の67%(28日が上限) |
・母親:産後56日を過ぎてから1歳となる前日 ・父親:出生当日から1歳となる前日 |
勤務先やハローワークを通じて申請 |
医療費助成制度 | 自治体で規定された条件を満たす子供を持つ世帯 | 医療費の全額(自己負担がある自治体もあり) | 各自治体への申請 |
子育てには費用がかかりますが、さまざまな支援制度があるので、活用することで節約に役立てましょう。子供の養育費に対し、高等学校や大学の学費などの教育費の用意を含めて将来に不安がある場合は、FPなどの専門家に相談することもおすすめです。
著者プロフィール
大谷 惇途
慶應義塾大学卒業。投資・ローン・税金などの金融分野を中心に5年以上の記事執筆経験がある金融ライター、現在はフリーランスで活動中。学生時代から株式投資を中心にさまざまな投資を行う。3級ファイナンシャル・プランニング技能士。
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