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第7回
田舎の固定資産税はなぜ高く感じるのか

固定資産税(+都市計画税)は、不動産を持っている人なら必ず支払わないといけない税金です。マンション住民にとっては、管理費、修繕積立金と共に、住戸維持のための3大経費といえるでしょう。ところで、みなさんの実家ではいくら固定資産税を支払っているかご存知ですか。その額を聞くと、「そんなもの」と思うかもしれませんし、「なんか高いなあ」と感じるかもしれません。その背景を解説します。

年々「重み」が増す固定資産税

毎年4月を過ぎると、4期に分けて納付額が記された固定資産税(+都市計画税)の納税通知書が送られてきます。大都市圏に住むファミリータイプの分譲マンションのオーナーなら、年に10万円以上支払っているのではないでしょうか。不動産オーナーの証ではありますが、それがどのように計算されて課税されているのか、多くの方はご存じないかもしれません。

納税通知書には「土地・家屋の課税明細書」が付いています。ここには、固定資産税(+都市計画税)の計算の根拠が載っています。その見方に付いては後述しますが、もしお手元に過去の納税通知書などが保存されているようでしたら、比べて見てください。
「ほとんど税額が変わっていない!」ということに気づいて驚く方が多いでしょう。

一部の都心人気アドレスを除けば、マンションの市場価格は年平均2%ずつ落ちていきます。4000万円で購入した新築でも、年80万円ずつ市場価値は低下して、第1回目の大規模修繕の頃には3000万円くらいになっているということです。

市場価値は落ちているのに、税金は変わらない。それは、「時価」に対する実効税率が上昇していくということです。4000万円のときの10万円なら0.25%ですが、3000万円に対しては0.33%になります。なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

固定資産税と都市計画税の仕組み

固定資産税の税率は全国的に1.4%で統一されています。課税対象は土地、家屋、有形償却資産ですが、一般の住戸では土地と家屋だけ考えておけばいいでしょう。これらは市町村の固定資産課税台帳に所有者として登録されている人が支払います。そこに住んでいるか、収益を得ているかなどは考慮されません。

これに、都市計画税が加えられます。その税率は0.3%を上限に、0.225%(東京都三鷹市)、0.2%(埼玉県新座市)、0.05%(千葉県成田市)といった具合に、市町村によってさまざまです。主に、都市インフラ作りに充当する目的で課税されています。

「土地・家屋の課税明細書」を再びご覧ください。そこには、課税対象となる土地・家屋の詳細が記されています。
「現況地目又な種類構造」には、土地は「宅地」「宅地(共用土地)」、家屋は「居宅 木造」「居宅 鉄筋コン(クリート造)」といった具合に載っています。
「地積または床面積」には土地と家屋の面積(㎡)が記されています。マンションの場合には全体で記され、各々の「分割納付持分」が載っています。

ところで、税額は「税率×課税標準額」で算出されます。
課税標準額のうち、土地については総務省が3年に一度改定します。これは、毎年発表される地価公示価格と路線価の鑑定評価をしている不動産鑑定士に発注されるので、土地に関するこれら3つの価格に不均衡感は生じにくいでしょう。

家屋についてはどうか。「木造」「鉄筋コン」と記されていたとおり、建物の構造によって扱いが変わります。マンションの場合は当然「鉄筋コン」です。竣工時に、市町村税務課の職員が新築家屋調査にやってきて現況を確認、「家屋評価」をします。建築確認や完了検査、登記情報と併せて、家屋の課税標準額が決められます。

新築時から3~7年間は減額期間があります。
課税標準額は、経年に応じて減価補正される仕組みはあるものの、年に0.02~0.03%程度とペースは穏やかで、負担減を実感しづらい構造になっています。鉄筋コンクリート(RC)造なら45~60年間、木造なら20~30年間がかりで最低額になるそうです。

「田舎」の固定資産が高く感じる理由

延々と固定資産税の説明をしてきました。今回のテーマである「田舎の固定資産が高く感じる理由」について考えてみましょう。

まず、自分の実家が毎年いくら固定資産税(+都市計画税)を支払っているか、ご存知ですか。帰省したタイミングで、確認することをお勧めします。
実例を交えて、ご説明しましょう。

まず、首都圏の政令指定都市の中心部にある住宅地の場合から見てみましょう。宅地は120㎡弱で、評価額は1000万円。坪単価27万円(実勢価格50万円ほど)。住宅特例適用で固定資産税の課税標準額は167万円に減額されていますが、都市計画税の課税標準額は333万円となっており、納付税額は年に3万3000円余りです。実勢価格と比べると0.17%程度になります。

問題は家屋の方で、築40年の木造二階建てで評価額は61万円。実勢価格は解体費用分だけマイナスの物件ですが、税額は年1万円課税されています。併せて4万3000円ですが、20年以上前に建てた物置にも別途課税されていました。六畳間ほどもない広さなのに年額8000円というのは安くはない感じです。

同じ都市の郊外にある住宅団地の場合は、築47年の52㎡の部屋で年3万円強の税額です。昔の公団らしいゆったりとした共用土地がその3分の1を占めています。こちらの実勢価格200万円ほどと比べると、実に実効税率は1.5%ほどになります。

もう1つ、地震の震源地となった熊本の町の例を挙げておきましょう。山林主体のこちらの家屋のない土地は長らく課税されていませんでしたが、ベッドタウン化の進行でここ数年、年4000円強の納税通知書が届くようになりました。ところが3年前に熊本地震があり、地価が低下した結果、課税最低ラインを割ってしまったようで、通知書が来なくなりました。

田舎の土地は取引が活発というわけではありません。流動性の乏しい土地では、近隣の市町村など範囲を広げて想定し、鑑定します。

地方都市のシャッター商店街にお店を持っていたり、郊外であっても、複数の家屋ある場合には、それなりの固定資産税が課されている可能性が大きい。貸して家賃がこれだけ取れるからこの土地の値段はいくらという収益還元法で算出されていないことも、「こんな土地・家屋なのに、何でこんなに税金を取られるの」という気持ちにさせられる要因になっていると思います。

市町村は自主財源の多くを住民税と固定資産税(+都市計画税)に依存しています。財政規模の小さい町村になると、さらに依存度は高まり、8割ほどにもなります。住民は年々減少していますが、土地と家屋は残ります。それが使用されていてもいなくても、そこにある限り課税される「固定資産税」は、貴重な収益源なのです。

イラスト/大和涼子
ダイヤモンド・セレクト編集部(ダイヤモンド社)