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第9回
水回りと間取りのリフォームでマンションライフをより快適に

マンションの専有部分である住戸内でも、暮らし始めて10年も経てばメンテナンスやリフォームが必要となります。家族構成の変化も大きなきっかけとなります。バスやトイレ、キッチンといった水回りでは大規模な改修が行うことも珍しくありません。生活の質を改善するため、必要な費用と備えについても併せて考えてみましょう。

10年で見違えるほど進化する住宅設備

東京・新宿にはさまざまな住宅設備メーカーのショールームが集まっています。
新宿住友ビルにあるノーリツのショールームでは、浴槽を自動洗浄してくれる「おそうじ浴槽」が人気です。手洗いの負担から解放される喜びもあって、説明を聞いている女性の目が輝いていました。

バス・トイレ・洗面室・キッチンといった水回りから、タイルや床材といった建材までを1ヵ所に揃えた住宅関連の総合的なショールームとしては、「TOTO・DAIKEN・YKK AP 東京コラボレーションショールーム」と「LIXILショールーム東京」があります。
この他、「クリナップ・キッチンタウン・東京」「タカラスタンダード新宿ショールーム」「永大産業 新宿ショールーム」などはキッチンを中心に展示されています。

新宿以外では、新橋駅に近い「パナソニック リビング ショウルーム」も見応えがあります。最新の状況を知るために、こうしたショールームを一度訪れることをお勧めします。

10年ひと昔とはいいますが、住宅設備の進化は日進月歩です。スマホ経由で家電を操作するなどIoT(モノのインターネット)が話題ですが、このように目に見えるかたちで省力化を実現してくれる住宅設備の更新は、生活の質を確実に向上させてくれます。

築10年目頃から現実味が増すリフォーム

通常は、新築マンションを購入して住み始めたばかりの頃にリフォームのことが頭に浮かぶことは少ないかもしれません。リフォームとは、一般には老朽化した部分の原状回復のための修繕のこと。不具合のあるところに手を入れて、新築時と遜色ないように機能を保つことを言います。

築浅物件のオーナーから比較的多く寄せられる要望は、「収納スペースを増やしたい」というものです。納戸の棚に金物レールを設置して収納力を高めるなど簡単な工事を行うだけでスペースを有効活用できるようになります。野村不動産パートナーズでは、マンションにより、集会室などに出向いて、収納セミナーや住設機器の展示イベント、その他各種イベントや相談会などを行っていますので、一度話を聞いてみることをお勧めします。

マンションでは、築8年目頃から、ディスポーザー(生ゴミ粉砕機)、給湯器やガスコンロといったキッチン関連の機器の不調が出てくることが多いのですが、これが住戸内のリフォームを考え始めるきっかけとなるようです。

また、管理組合内で共用部分の大規模修繕をどのように実施するか、話し合いが始まる時期に、「自宅も」と考える方も多いようです。

同じタイミングで交換が必要となる台所回りの機器

小まめなメンテナンスを行いながら長く使い続けることを心がける一方で、食品に消費期限と賞味期限があるように、壊れてはいなくても、省エネ性能の向上や使い勝手の点から新しいものに交換することも、暮らしを快適にする方法の一つではないでしょうか。

20年を過ぎると水回りのリフォームも必要に

築20年も過ぎると、住宅設備も陳腐化してきます。とりわけキッチン全体、トイレ、お風呂などの水回りの部分において、交換を伴うリフォームが必要になってくる時期にさしかかりますが、検討自体は、予算や希望する機能などを決めるため、築12~15年目あたりから始めた方がいいようです。
検討の際、設備のグレードによって価格差が大きいため、予算を考えるときに迷ってしまうケースが多いからです。

例えば、水回りで代表的なトイレのリフォームでは、マンションでは、不燃材の使用が義務付けられている場合があります。安いからと工事価格だけ見て、こうしたマンションの仕様を理解していない施工業者に頼んだところ、工事のやり直しが必要になったような例もあるので要注意です。

費用のお話になりますが、一般に、水回りのリフォームにはまとまった金額が必要となります。

トイレの交換は、工事費込みで20万円くらいからありますが、予算的には30万~40万円の施工例が多いようです。

シャワー付きトイレの進化は目覚ましく、タンクレスなど省スペースはもとより、使用する水の量が以前の3分の1程度まで減少するなどエコ性能も高まっています。

ユニットバスやトイレの交換は大規模な工事に

浴室のユニットバスの交換では、扉部分もその一部のため、併せて交換の対象となります。その場合、浴室回りのクロスの張り替も伴い、同時に、脱衣所や洗面台の工事をする例も多いようです。平均的な費用は120万円程度となります。

キッチンは、収納もセットで交換した場合、平均では150万円程度になりますが、50万~300万円程度になる場合もあり、グレードによる価格差が大きいのも特徴です。対面式の見せるキッチンにしたいと、壁を抜いて、リビングとつながるオープン化工事を行うと、200万や300万円は必要となることもあります。

家族構成の変化や経年でのフルリフォームも

お子さんが独立するなど、住戸内の家族構成が変わるときは、間取りの変更を伴うリフォームを行うタイミングとなることが多くあります。大学生のお子さんが出て行ったので、築3年目くらいで部屋の数を減らしたという極端な例もあるほどです。

一般には、築30年前後でフルリフォームを行う傾向があります。中には予算が1000万円を超えるような例もあります。
2002年に、ブランドが「プラウド」シリーズに統一される以前の野村不動産のマンションには、「コープ」「ヒルズ」「ステイツ」などさまざまなブランドがあります。こうしたマンションでは、配管の位置や素材が現在のものとは大きく異なります。相談会でも、劣化した配管を示しながら、工事の必要性を認識してもらうことから検討が始まります。
最近のリフォームで人気のあるコンセプトは、ホテルライクな部屋です。生活感をなくすため壁収納に変更し、たんすなどの家具を極力減らし、間接照明を設置することにより、非日常的な空間へと変わります。
また、床材の張り替えでも、汚れた感じのビンテージ風にしたいなど、こだわりが強い傾向にあります。
さすがにマンションで「ハンモックをつけたい」、「外側が見えるお風呂にしたい」といった要望に応えるのは難しいのですが、極端な話、管理規約にもよりますが、共用専用部分である玄関ドアと外窓、コンクリートの躯体以外はすべて対象となりえます。
原則として、専有部分のリフォームは区分所有者が自由に行えます。ただし、共同住宅の構造上、壁や床・天井の裏に走るパイプ類には共用設備の部分もあります。これらは動かすことはできません。
建築士が言う「雑壁」はともかく、「構造壁」は間取り変更などで改変(除去)することができません。まずは管理会社と相談してみてください。

共用部分の修繕には、管理費と一緒に徴収される修繕積立金がありますが、住戸内設備類の更新費用は自費で賄う必要があります。そのため、暮らしの快適につながる専有部分のメンテンスやリフォームを必要に応じてできるよう、入居開始時から計画的に、例えば、月1万円を目安に別途積立てて備えておくと、いざというときにあわてなくて済みます。

リフォームに際してはローンを組むこともできますので、資金繰りも含めてプロに相談をして、快適なマンションライフを送ってみてはいかがでしょうか。

協力/伊藤雅史(野村不動産パートナーズ リビング事業本部リフォーム営業部リフォーム一課長)
イラスト/大和涼子
ダイヤモンド・セレクト編集部(ダイヤモンド社)