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第16回
保険料アップ! 火災保険と地震保険をどう見直す?

生命保険はたまに見直しても、火災保険や地震保険は一度も……という方は多いのではないでしょうか。都内に住むAさん(47)もそんな1人。今まさに、「保険料が上がる前に更新期間の変更を!」と妻に急き立てられているのですが、いざ保険証券を見ても補償内容がよく理解できません。そこで、妻に指導を受けながら内容を再確認することになりました。

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住宅に掛ける損害保険料が上がっている!

Aさんが現在住んでいる東京郊外の3LDKマンションを新築で購入したのは、今から13年前のことでした。専業主婦の妻と当時1歳だった長女の3人暮らし。なるべく低金利でと、熟慮を重ねて35年の長期ローンを組んだことをはっきりと覚えています。

今朝家を出る前、「これ、どうするの?」と、妻が1通の封書を差し出しました。そういえば、この「地震保険更新のお知らせ」は毎年2月末にやって来ます。その日の夜、妻がごそごそと引き出しから保険証券を引っ張り出してきました。それによると、「火災保険」の保険期間は35年間(現在は最長10年に改定)、「地震保険」は1年間で、火災保険の満期まで自動継続する内容になっています。

住宅ローンを組むには火災保険への加入が必須です。Aさんは13年前、保険会社の人から地震保険をどうするかと聞かれ、「とりあえず1年」と言ったことを思い出しました。

ところが、証券を見てもさっぱり内容が分かりません。「火災保険は火事、地震保険は地震で……??」と首をひねるばかり。それを横目で見ていた妻がたまりかねて口を開きました。「補償内容は後で確認するから、先に更新期間を変えるか決めてちょうだい!!」

妻の言うことはもっともでした。東日本大震災以降、地震保険の料率は3段階で改定されることになり、2017年には全国平均5.1%、19年には同3.8%の料率アップが行われました。つまり、Aさんの地震保険はこれまでに値上げされてきた保険料で自動更新されてきたわけで、長期契約の方が保険料が安くなることも含め、17年以前に5年契約に変えておけばと、妻はAさんを執拗に責め立てます。3回目の改定は21年1月の予定ですから、「今度こそ!」と、妻の鼻息はますます荒くなるわけです。

保険料が上がっているのは火災保険も同様で、近年、台風やゲリラ豪雨といった自然災害による水災が多発し、保険金の支払いが増えていることが主な値上げの原因です。
「ん? 火災保険で水災被害の補償??」――こんなAさんのために、住宅向けの主要な損害保険である、火災保険と地震保険の内容を確認しておきましょう。

火災保険と地震保険の補償範囲は?見直すならどこ?

火災保険は、火災、落雷、破裂、爆発による損害への補償が基本です。そこに、風災、雪災、ひょう災のほか、水災などの自然災害による被害への補償がパッケージ化されている商品が多く、その他に特約として、家財の被害への補償、マンションで起こりがちな給排水管劣化による水濡れ事故への補償などを付けるのが一般的です。

水災補償については、まず自分の住む自治体のハザードマップで浸水の恐れがあるエリアを把握し、該当する場合は、マンション住まいであっても特に低層階に住む人は加入しておくのがよいでしょう。たとえ高台に立っているマンションでも、ゲリラ豪雨による内水氾濫の恐れもあります。管理組合が水災保険に加入している場合もありますが、これはあくまで駐車場やエントランスといった共用部分に対する保険であり、区分所有者の資産である専有部分は対象外です。

その他の補償としては、家財保険をぜひ検討してみてください。杉並区で保険代理店を営むKさんは、「火事や水災の被害に最も保険金が下りやすく、かつ早く下りる保険」であり、「速やかな生活復旧のためには不可欠」と言います。家財の再取得価額(同等の物を新規購入するのに必要な金額)は、単身世帯で300万円程度、Aさんのような40代の世帯主を含む3人世帯では1300万~1400万円程度といわれており、この額が保険金額の目安となります。

一方、Aさん夫妻がもめていた地震保険は、地震や噴火、およびこれらを原因とする津波によって住居や家財が損害を受けた時に保険金が支払われる保険です。言い換えれば、地震によって火災が発生しても火災保険の補償対象とはなりません。

また、加入には火災保険への加入が前提であったり、保険金額は火災保険の30~50%の範囲内(居住用建物は5000万円まで、家財は1000万円まで)とすることなどが法令で決まっているため、地震保険の内容はどの保険会社も一律なのです。

これは、地震は、発生時期や頻度、損害のおよぶ範囲などが予測困難であり、保険会社だけで保険金を払い切れないケースも想定されるため、政府が再保険によって保険会社と損害の補償を分担する仕組みを採用しているためです。なお、更新期間は、火災保険を10年契約している場合1~5年となります。

気候変動などの影響で自然災害リスクの予測がますます難しくなる中、火災保険、地震保険の保険料は今後も上昇していきます。現在加入中の保険が月払いや年払いなら、更新時期が保険料の値上げの時期と重ならないよう長期契約に変更することは必須でしょう。

火災保険に関して保険料を見直したいのであれば、例えば、個人賠償責任補償特約(被保険者とその家族が他人に与えた損害への賠償金などを補償)が、他に加入している損害保険(例:クレジットカードの付帯保険など)の同特約の補償と重なっている場合はいずれかを解約するなど、総合的な見直しを行う必要があります。

イラスト/直美
ダイヤモンド・セレクト編集部(ダイヤモンド社)