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第15回
自宅マンションの資産価値を試算してみよう!

マンションは住まいであると同時に、不動産という「資産」でもあります。今所有している物件の「資産価値」は、どう試算すればよいでしょうか。よく、買った時より値が上がった、下がったという再販時の市場価値で不動産の価値が測られることがあります。今回は、「貸した場合にどのくらいの賃料が得られるか」という「収益力」にも着目し、所有物件の資産価値を試算してみたいと思います。

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マンションの資産価値を試算する二つの方法

ファイナンシャル・プランナーで住宅ローンアドバイザーの藤井亜也氏は、住宅ローンを組んでマンションを買う人には必ず、「将来『売る』ことを考えて」という助言をするそうです。仮に同じ価格帯の候補物件が2~3ある場合、10年、20年後により高く売れる物件を選ぶことは将来的な安心につながります。

すでにマンションを購入して一定の年数が経過している人にとっても、やはり自宅を「資産」として見ることは大切です。しかし、「将来いくらで売れるか」を見極めることはプロでも容易なことではありません。そこで、物件の持つ現在の価値を試算することで、ある程度の資産価値を推測しようという考え方があります。

試算方法の一つは、所有物件近隣の同じような条件の物件が、過去にいくらで取引されたかという実績に基づいて資産価値を算出する「取引事例比較法」です。もう一つは、仮に今、自宅を賃貸に出した場合いくらで貸せるかという「収益力」を試算する「収益還元法」です。

簡単に言ってしまえば、前者がエリアという「面」で不動産の価値を比較して算出された資産価値であるのに対し、後者は、投資的観点から物件本来の持つ資産価値を計る方法で、いわば「点」としての価値を試算する方法です。

藤井氏は、「点と面の両方から見ることで、より正確な資産価値を試算することができる」と言います。

所有物件の収益力を試算する

「取引事例比較法」に用いる過去の取引事例は、国土交通省の「土地総合情報システム」などから収集した数値を用います。あるいは、地元の不動産業者を当たることで、過去に自宅のあるエリアで所有物件とよく似た仕様や条件の物件が、いくらで取り引きされたかの相場感を知ることもできます。

一方の「収益力」は、少々の計算が必要です。試算方法を図の例で見てみましょう。

まず、物件掲載数の多い大手不動産情報サイトで、①の中古物件販売価格を調べます。所有する物件の周辺エリアで、仕様や条件がよく似た物件が対象です。掲載件数が多いサイトを2~3カ所当たってください。得られた価格を平均することで、販売価格の相場を知ることができます。

⑤と⑥については、大手不動産情報サイトの賃貸情報を見るか、投資物件の紹介サイトで情報を収集します。

これらの要素を図の式に当てはめます。これは「収益還元法」の中でも「直接還元法」という大まかな試算法なので、数値はあくまでも目安としてください。

図の例では、「A」つまり物件本来の価値が3200万円と試算されました。対して「B」つまり、売った場合は3096万円と試算されました。よって「A>B」ですから、売るよりも賃貸物件として活用する方が収益性が高いということになります。「A<B」の場合は、この逆ということになります。

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所有物件の資産価値をライフプランに

所有物件の資産価値は、ライフプランを考える上で一つの目安を提供してくれます。収益還元法に当てはめて、次のケースを考えてみましょう。

A≒Bか、A>Bの場合。物件本来の価値は市場価格と同等かそれ以上です。ローンの残債がなければ貸す(第12回参照)こともできます。
あるいは、将来、子どもに贈与、相続したいという場合は、繰り上げ返済などで積極的に残債を減らし、子どもに負担をかけずに「承継する」選択肢もあります。

A<Bの場合はどうでしょう。物件本来の価値は市場価格より低い状態です。築年数が相当古かったり、近隣にマンションが多数建設されたりして、競争力が低下したケースなどが考えられます。

こうしたケースでは、「住宅ローン控除が終了しているのであれば、繰り上げ返済やローンの借り換えなどでオーバーローン状態の解消に向かいつつ住み続ける」、あるいは将来売るにしても「販売価格から残債を引いて、多少お金が残る、理想的には引っ越し代くらいは賄える状態にしてから売却」(藤井氏)という道もあるでしょう。
所有物件の資産価値を知ることが、先々の資産防衛や資産活用の第一歩となるのです。

イラスト/直美
ダイヤモンド・セレクト編集部(ダイヤモンド社)