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第20回
コロナ禍のマンション市況で何が起こっているのか

コロナ禍拡大の影響でマンションの供給戸数が減少するなか、これから購入を考える人は、希望する条件の物件に出合えるかが気になるところでしょう。一方で、すでに購入している人の中には、住宅ローンの返済に不安を感じる人もいるはずです。突如として襲ったコロナショックに、マンション市況はどう反応しているのでしょうか。また、マンション所有者の経済的な不安を緩和するための方策はあるのでしょうか。

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「都心立地」に加え「二拠点居住」が新たな需要に

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国内の経済活動は大きな打撃を受けました。その影響は不動産市場にも例外なく及んでいます。特に新築物件においては、緊急事態宣言の発令と共に販売の要であるモデルルームへの客足が大幅に減少し、一時的な閉鎖に追い込まれるところが多発する事態が生じました。

実際、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)に緊急事態宣言が出された4月以降のマンション販売戸数は、4月が686戸(前年同月比51.7%減)、5月が393戸(同82.2%減)、6月が1543戸(同31.7%減)と、大きく減少しています(以上、不動産経済研究所調べ)。

リーマンショックの影響を受けた2008~09年にも、首都圏のマンション販売戸数は07年比で30~40%まで落ち込んだことがあります。この時は、中小のデベロッパーが大幅な値下げで在庫の調整を行いました。となれば、今回も同じように新築物件の値下げが期待できるのでしょうか。そう考えると、消費者としては買いどきを見きわめることがとても難しくなります。

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では、現状の物件価格の動きはどうなっているのでしょうか。

実は、2020年1~6月の首都圏新築・中古マンションの価格は、コロナの影響で一時的に落ち込んだ月こそあれ、前年同月と比べて軒並み上昇傾向にあるのです(図1)。

それに加えて、新築物件に関しては、3~6月の契約率が各月とも70%を超える高い水準に達しました(同研究所調べ)。前述したように販売戸数は大幅に減っていますから、少数の物件が高くても売れているということになります。

同研究所企画調査部主任研究員の松田忠司氏は、この傾向を「人件費や建材費が高止まりしている背景から、各デベロッパーが、確実に売れる希少性の高い少数の物件に絞った販売戦略を取っている」と分析します。

1~6月期の首都圏販売物件は、東京都区部の物件が51%を占めていることがその現れでしょう。例えば、1月に価格が急上昇したのは、地下鉄「白金高輪」駅3分の再開発物件「白金ザ・スカイ」(東京・港区)がけん引したため(松田氏)です。リーマンショックの頃と違い、現在は体力のある大手のデベロッパーが、こうした希少な都心立地物件を、長期間にわたって価格を下げずに販売しているが故に、投げ売りのようなことはまず起こらないのです。

一方で、コロナによって奇しくも企業にリモートワークの導入が進んだこともあってか、富裕層を中心に、二拠点居住用のセカンドハウスとして、環境のよい郊外のマンションを買い求めるという新たなニーズも出始めているようです。

強いていえば、こうしたライフスタイルに合う物件と出合った時が、その人にとってのマンションの買いどきなのかもしれません。

金融機関や行政が実施する対コロナ支援策

コロナによる経済的ダメージについては、すでにマンションを購入して住宅ローンを返済している人の方が、より深刻な危機感を抱いていると思われます。

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金融庁は20年3月、金融機関に対し、コロナ感染拡大の影響を踏まえた事業者・個人への支援を要請しました。そうした中で、住宅金融支援機構が、フラット35の返済方法変更をコロナの影響を受けた契約者にも適用したり、他の金融機関でも、既存契約者向けに住宅ローンの相談窓口を開設するといった動きが見られます。

また、行政も住宅ローン控除の適用要件の緩和や、固定資産税・都市計画税の徴収猶予策を打ち出しています(図2)。

これらの支援策は、今後の経済動向によって変更されたり、もしくは新たな策が講じられる可能性もありますが、いずれにせよ、住宅ローンの返済に関して心配事がある場合は借入先の金融機関に、税に関しては自治体や税務署に、まずは相談をしてみてください。

イラスト/直美
図表作成/小川あゆみ
ダイヤモンド・セレクト編集部(ダイヤモンド社)