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第12回
転勤が決まったら、自宅マンションは売る?貸す?

マンションを買ったばかりなのに、まさかの転勤辞令が!
こんな時、自宅マンションをどうしますか? 「売る」「貸す」、あるいは「そのまま空けておく」のどれを選択すべきか、判断基準はあるのでしょうか。中でも「貸す」場合には、管理組合や金融機関と話し合う必要もあり、細心の注意が必要となるようです。

ファイナンシャル・プランナーで住宅ローンアドバイザーの藤井亜也氏に聞きました。

「売る」際に最も注意したいこと

転勤を機にマンションを売る選択をする方は、次のような状況にある場合が多いようです。

●転勤の期間が3年超など長い

●今の住居に戻る可能性が低い

●住宅ローンを完済している、または売却で残債を清算できる

最も注意したいのは、住宅ローンが残っている場合です。不動産業者に見積りをしてもらい、売却してもかなりの残債が残る見込みなら売ることはお勧めしません。また、不動産の売却にあたっては、仲介手数料や税金など諸経費もかかることや、3000万円以上の売却益が出た場合は、譲渡所得税も課税されることも念頭に置いておきましょう。(第10回参照)。

「貸す」場合は、まず管理規約の確認から

長くても3年程度の転勤で今の家に戻って来られるなら、「その期間だけ賃貸に出して資産運用を」と考える人は少なくないかもしれません。でも、そこは要注意です。いくら自宅とはいえ、マンションには区分所有者が守るべき「管理規約」があります。

最初に、何を置いてもマンションの管理規約を確認しましょう。最近は、管理規約で民泊禁止を定めるマンションも多く、総じて第三者への貸し出しには慎重です。仮に、管理規約で原則的には賃貸が禁止されていても、どの範囲までなら許容されるのか、理事会や管理人に聞いてみるのも一案です。

例えば、過去に「管理組合の総会には必ず所有者が出席する」「隣の住戸や理事会に紹介した上で親族を住まわせる」といった配慮をし、特例的に賃貸が認められた実績がある場合などは、可能性ありかもしれません。ちなみに、所有者の親族が住むことには寛容な場合が多いようです。

「ローン返済中は賃貸できない」が大原則

とはいえ、転勤期間中もローンが残るのであれば話は別です。そもそも住宅ローンは、本人が住むことを条件に、長期かつ低利での融資が行われています。ところが、それを第三者に貸すとなれば、金融機関との契約に反することになります。住宅ローンの返済中は貸せないのが大原則です。

それでも貸したい場合は、現実問題として自己資金での一括完済は難しいでしょうから、まずは借入先の金融機関に相談をしてみることをお勧めします。

金融機関の現実的な対応として考えられるのは、賃貸に出す期間に限り、投資用物件への融資、いわゆる「アパートローン」(住宅ローンより金利が1%程度割高で貸付期間も短い)に借り換えを勧めるか、それに準じる金利に変更するという方法です。

転勤から戻れば、再び自分が住むようになった時点から、再度住宅ローンへの借り換えを行うことは可能ですが、賃料収入とローンの借り換えコストのバランスをよく考える必要があるでしょう。

なお、フラット35の場合は、手続きを取ることで住宅金融支援機構の定める条件と期間でのみ、転貸が認められることがあります。

条件にマッチする借り手と出会いたい

実際に自宅を賃貸に出すことになった場合、期間限定で借りてくれる相手を探さなければなりません。その際は、現居を買った際の不動産業者に相談するのが一般的です。

転勤して数年後に確実に現居に戻るなら、貸し出しの形態は「定期借家」がよいでしょう。通常の賃貸借契約とは異なり、定期借家では「3年間のみ」などと賃貸期間を厳密に定めることができます。

ただし、借り手に居住期間制限がある分、得られる家賃の相場は通常の賃貸借契約より1~2割前後安くなることは知っておいてください。

なかなか条件に合う借り手が見つからない時は、リロケーション業者に依頼する方法もあります。彼らの多くは、転勤の多い業種、例えば金融、商社、空輸、公務員などの社宅需要に対して、条件ごとにまとまった戸数を提供する情報を持っています。

ですから、「こんな業種の人に借りてほしい」といったニーズにも応じてもらいやすく、賃貸管理も一括代行してくれます。その分だけ、手数料は一般の不動産会社に仲介を依頼するよりも高くなります。

なお、転勤の多い会社では、人事部や総務部が転勤に伴う転居のための手順を書いたリーフレットを用意していたり、複数のリロケーション業者を紹介してくれることもありますので、問い合わせてみてください。

最後になりましたが、短期の転勤なら留守宅を「そのまま空けておく」のも一つの方法です。転勤が決まると、おおむね3~4か月後には引っ越しをしなくてはなりません。実際問題として、この期間で住宅を売ったり貸したりするには、かなりの労力がいるでしょう。

とはいえ、家は人が住まないと劣化しやすくなるため、時々帰宅して様子を見るか、それが難しい場合は、家賃を取らずに親族に住んでもらうという選択肢も検討してみてください。

監修/藤井亜也(COCO PLAN 代表取締役社長)
イラスト/大和涼子
ダイヤモンド・セレクト編集部(ダイヤモンド社)